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アイテム
水溶液中における超分子の金属イオン認識に関する統計力学的研究
https://ir.soken.ac.jp/records/344
https://ir.soken.ac.jp/records/344cec82cc8-b131-43be-beab-38887e166b8b
名前 / ファイル | ライセンス | アクション |
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要旨・審査要旨 (330.6 kB)
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Item type | 学位論文 / Thesis or Dissertation(1) | |||||
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公開日 | 2010-02-22 | |||||
タイトル | ||||||
タイトル | 水溶液中における超分子の金属イオン認識に関する統計力学的研究 | |||||
言語 | ||||||
言語 | jpn | |||||
資源タイプ | ||||||
資源タイプ識別子 | http://purl.org/coar/resource_type/c_46ec | |||||
資源タイプ | thesis | |||||
著者名 |
松上, 優
× 松上, 優 |
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フリガナ |
マツガミ, マサル
× マツガミ, マサル |
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著者 |
MATSUGAMI, Masaru
× MATSUGAMI, Masaru |
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学位授与機関 | ||||||
学位授与機関名 | 総合研究大学院大学 | |||||
学位名 | ||||||
学位名 | 博士(理学) | |||||
学位記番号 | ||||||
内容記述タイプ | Other | |||||
内容記述 | 総研大甲第1027号 | |||||
研究科 | ||||||
値 | 物理科学研究科 | |||||
専攻 | ||||||
値 | 08 機能分子科学専攻 | |||||
学位授与年月日 | ||||||
学位授与年月日 | 2007-03-23 | |||||
学位授与年度 | ||||||
値 | 2006 | |||||
要旨 | ||||||
内容記述タイプ | Other | |||||
内容記述 | <b>1.研究の背景</b><br /> 人間の体内では分子認識が当たり前のように行われている。例えば、血液中に存在するヘモグロビンは酸素だけを選んで運搬することが知られている。さらに、薬、ホルモン、酵素およびイオンチャンネルの働き も分子認識を語らずして理解することはできないであろう。このような生体内反応を理解するためには分子 認識のメカニズムを理解することが極めて重要である。分子認識に関する研究は数多くやられているが、そのメカニズムについてはまだ分からないことが多く存在している。それはホスト分子の複雑さのみならず、ゲスト分子と溶媒分子との複雑な相互作用があるからだと考えられる。そこで、本研究では、最も簡単な分子 認識であるクラウンエーテルの金属イオン認識の問題に挑戦した。この間題に関しては、実験による研究は 数多くなされているが、それらの分子論的描像を明らかにしようと思えばそれだけでは不十分であろう。それを補うには、分子シミュレーションや理論による研究が必要であるが、それらは非常に少ない。分子認識を取り扱う場合、自由エネルギーが分子認識の駆動力となる。分子性液体の統計力学であるRISM理論では溶質の周りの溶媒の分布と溶媒和自由エネルギーを求めることができる。特に最近開発された3次元 RISM理論はタンパク質問の空孔のように限られた空間に閉じこめられた分子の分布を決定する能力を有 することが明らかになった。本研究では3次元RISM理論をクラウンエーテルに適用し、この超分子による 金属イオン認識を解明する。<br /><br /> <b>2.理論</b><br />3D-RISMの方程式は溶質層媒サイトの全相関関数(<i>h</i><sup>uv</sup><small>γ</small>(<b>r</b>)=σと直接相関関数(<i>c</i><sup>uv</sup><small>γ</small>(<i>r</i>)で、次式のように表される。<br /> <i>h</i><small>γ</small><sup>uv</sup>(<b>r</b>)=<large>ΣΣ </large><i>c</i><sup>uv</sup><small>γ’</small>(<b>r</b>)*( <i>w</i><sup>vv</sup><small>γ’ γ </small>(<i>r</i>) + <i>p</i><sup>v</sup><small>s</small> <i>h</i><sup>vv</sup><small>γ’ γ </small> (r) ) (1)<br /> <sup><i>s</sup></i> <sup><i>γ'</sup></i><br />ここで、上付の<i>u</i>および<i>v</i>はそれぞれ溶質と溶媒を表している。さらに、<i>W</i><sup>vv</sup><small>γ’ γ </small><i>(r)</i> = σ(<i>r</i>-<i>l</i><sup>vv</sup><small>γ’ γ </small> ) はサイト間隔 <i>l</i><sup>vv</sup><small>γ’ γ</small>の溶媒分子の分子内相関関数である。また、*は畳み込み積分、<i>p</i><sup>v</sup>は溶媒の数密度を表している。溶媒の全相関関数(<i>h</i><sup>uv</sup><small>γ’ γ</small>(<i>r</i>))は誘電率を正しく与えるRISM理論であるDRISM理論から得られるものを使用する。<br /> 次に、3D-KH closureは次式で与えられる。<br /> exp(<i>d</i>)<small><i>γ</small> </i><sup>uv</sup>(<b>r</b>) ) for (<i>d</i>)<small><i>γ </i></small><sup>uv</sup>(<b>r</b>) ≤ 0,<br /> <i>g</i><sup>uv</sup><small>γ </small> <b>(r)</b> = { <br /> 1+<i>d</i>)<i>γ </i><sup>uv</sup>(<b>r</b>) for (<i>d</i>)<i>γ </i><sup>uv</sup>(<b>r</b>) >0, (2)<br /><br /> ここで、<i>g</i><sup>uv</sup><small>γ </small><b>(r)</b>=<i>h</i><i><small>γ</small></i><sup>uv</sup>(<b>r</b>)+1は溶質-溶媒サイトにおける分布関数である。<br /><br /> <i>d</i><sup>uv</sup><small>γ</small> <b>(r)</b>=-<i>βu</i><sup>uv</sup>γ(<b>r</b>)+ <i>h</i><sup>uv</sup><small>γ</small>(<b>r</b>)-<i>c</i><sup>uv</sup><small>γ</small>(<b>r</b>)で表される。<b><i>β</i></b>=1/<i>k<small>B</small>T</i>である。<br /><br /> ポテンシャル関数としては<br /> σ<small><i> αγ</small></i> σ <small><i>αγ</small></i> <b>q</b><sup>M</sup> <i><small>α</i></small> <b>q</b> <sup>v</sup><small>γ</small><br /> <b><i>u</b></i><i><sup>uv</sup><small>γ</small></i> (<b>r</b>) =<b><font-size:large;>Σ</span></b> {4ε<small><i>αγ</small></i> [ ( --------- )<sup> 12 </sup> - (--------- )<sup>6</sup> ] + -----------} (3)<br /> α</i><small>∈</small>solute</b> |<b>r</b>-<b>r</b><i><sup>u</sup><small>α</small></i>| |<b>r</b>-<b>r</b><i><sup>u</sup><small>α</small>| |</i><b>r</b>-<b>r</b><i><sup>u</sup><small>α</small></i>|<br /><br /> を使用した。式(3)の第一項はLennard-Jones (L-J) 相互利用、第二項はCoulomb相互作用である。 <i>q</i><small>α</small>および<i>q</i><small>γ </small>は、サイトαとサイトγにおける部分電荷である。ε <small>αγ </small>およびσ <small>αγ </small> はそれぞれサイトαとサイトγの 間におけるエネルギーとサイズのパラメータである。 DRISM理論から得られる<i>h<sup>w</sup><small>γ’γ</small></i>(<i>r</i>)を用いて式(1)と式(2)を繰り返し解くことにより、無限希釈における溶質-溶 媒サイトの相関関数を得ることができる。<br /> まず、DRISM理論を用いて塩化リチウム水混合溶液(1M)、塩化カリウム水混合溶液(1M)、塩化マグネシ ウム(1M)および塩化カルシウム水混合溶液(1M)の計算を行った。水のモデルにはSPC/Eを採用した。次に、それぞれの塩化物水溶液中の12-crown-4(12C4)および18-crown-6 (18C6) の計算を3D-RISM / KH 理論を用いて計算を行った。ここで、クラウンエーテルの構造はGaussian03を用いてB3LYP/6-31+G(d)レベルで構造最適化したものを用いた。<br /><br /><b>3.結果と考察</b><br/> <b>12-crown-4の金属イオン認識</b><br /> 3D-RISM/KH 計算の結果、Li<sup>+</sup>およびMg<sup>2+</sup>は12C4が持つ環の中心に入り込み、認識されることが明らかとなった。一方、K<sup>+</sup>およびCa<sup>2+</sup>は12C4の環の中心に入り込むことができず、認識されない。これらの結果 から12C4の金属イオン認識ではイオンサイズおよび電荷の大きさが依存する3つの要因があることが考え られた。1つ目は、12C4と金属イオンとの静電的な安定化。2つ目は、12C4と金属イオンの反発で、イオン サイズが小さくなることによって反発も小さくなる。3つ目は、イオンに水和している水分子および12C4と相互作用している水分子の脱水和にともなう自由エネルギーである。K<sup>+</sup>の場合は、環に対してイオンサイズが あまりに大きく、12C4とK<sup>+</sup>の反発が大きいために認識されない。一方、Li<sup>+</sup>およびMg<sup>2+</sup>の場合は、環に対してイオンサイズが十分に小さく、脱水和にともなう自由エネルギー損失を補うことができるため認識される。しかし、Ca2+の場合は脱水和にともなう自由エネルギーの損失が大きいため12C4に認識されない。つまり、水溶液中のイオンの認識の問題が単に裸のイオンのサイズだけに依存していないことを意味している。したがって、このような金属イオン認識の問題ではイオンの周りの水和構造が大きく影響を与えている可能性が 示唆された。<br /><br /><b>18-crown-6の金属イオン認識</b><br /> Li<sup>+</sup>,K<sup>+</sup>,Mg<sup>2+</sup>およびCa<sup>2+</sup>すべて18C6に認識された。K<sup>+</sup>は18C6が持つ穴の中心に分布が見られた。こ のことは18C6の持つ穴とK<sup>+</sup>のサイズがほぼ一致していることを表している。一方、Li<sup>+</sup>,Mg<sup>2+</sup>およびCa<sup>2+</sup>の 系では18C6が持つ穴に対してドーナツ状に金属イオンの分布が見られた。このことは18C6が持つ穴に対 して金属イオンのサイズが小さいことを表している。今回の計算では、環の自由度を固定しているため金属 イオンの錯形成は表面電荷が大きい金属イオンの順に安定になっている。しかし、実験から求められた錯 形成定数を見ると穴のサイズとイオンのサイズがほとんど同じであるK<sup>+</sup>が最安定である。このことは、穴に対 してイオンサイズが小さいLi<sup>+</sup>,Mg<sup>2+</sup>およびCa<sup>2+</sup>では金属イオンのサイズと穴のサイズが一致するような歪んだコンフォメーションとり、環の構造がK<sup>+</sup>の場合の平面構造よりエネルギー的に不利になるからである。した がって、定量的な錯形成を議論するためには各溶液に対して長安定構造を求め、錯形成定数などを議論する必要があると思われる。 | |||||
所蔵 | ||||||
値 | 有 |