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壁コンディショニング法は,核融合実験装置において,プラズマ中に混入する不純物量を減らし,水素リサイクリングを抑え,これらの結果としてエネルギー閉じ込め時間等のプラズマパラメータを向上させるために必要とされている。これらの目的で,最近ボロニゼーションと呼ばれる方法が多くのトカマクで行われてきた。TEXTOR,DIII-D,JT-60Uなどでは150~300℃という壁温条件で適用され,水素リサイクリングを十分に抑える結果になっている。大型ヘリカル装置(LHD)では,このボロニゼーションが壁表面制御の主要な方法として考えられている。しかし,LHDの真空容器の温度は,100℃以下に制限されているため,ボロニゼーションで形成されるボロン膜中の水素濃度は十分低く抑えられず,リサイクリング抑制に問題がある。そこで,ボロニゼーションを行うときに利用されるグロー放電の制御によって,ボロン膜中の水素濃度を抑える新しい方法が要求されている。本論文の目的は,ボロン膜中の水素濃度測定法の開発,水素濃度のグロー放電パラメータの依存性の解明,これらを通じて,水素リサイクリング抑制に最適なグロー放電条件の把握の3点に要約される。さらに,ボロン膜中の水素濃度を決める物理機構についても議論し,ボロンコーティング過程の理解の深化を目指すものである。\u003cbr /\u003e 水素濃度の測定,評価のため,3つの方法について改良,開発を行った。第1はフラッシュフィラメント(FF)法開発,第2は残留ガス分析(RGA)法改良,第3はイオンビーム分析法(IBA)改良である。この中で,特にFF法は,放電プラズマ中に置いたフィラメント上にコーティング膜を生成させ,コーティング終了後に通電加熱して脱離する水素量をRGAで定量するという単純な方法であり,コーティング直後にその場で短時間に膜中水素量を相対評価できる特徴をもつ。この測定法を確立した結果,多くの放電条件を比較的短時間に,系統的に調べることが可能になった。\u003cbr /\u003e ボロニゼーション実験用に,実験装置PPT(Plasma Processing 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EXPERIMENTAL STUDY ON REDUCTION OF HYDROGEN CONTENT IN LOW Z THIN FILMS BY CONTROLLING DC GLOW DISCHARGE CONDITIONS
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名前 / ファイル | ライセンス | アクション |
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Item type | 学位論文 / Thesis or Dissertation(1) | |||||
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公開日 | 2010-02-22 | |||||
タイトル | ||||||
タイトル | EXPERIMENTAL STUDY ON REDUCTION OF HYDROGEN CONTENT IN LOW Z THIN FILMS BY CONTROLLING DC GLOW DISCHARGE CONDITIONS | |||||
タイトル | ||||||
言語 | en | |||||
タイトル | EXPERIMENTAL STUDY ON REDUCTION OF HYDROGEN CONTENT IN LOW Z THIN FILMS BY CONTROLLING DC GLOW DISCHARGE CONDITIONS | |||||
言語 | ||||||
言語 | eng | |||||
資源タイプ | ||||||
資源タイプ識別子 | http://purl.org/coar/resource_type/c_46ec | |||||
資源タイプ | thesis | |||||
著者名 |
Natsir, Muhamad
× Natsir, Muhamad |
|||||
フリガナ |
ナシール, ムハマド
× ナシール, ムハマド |
|||||
著者 |
MUHAMAD, Natsir
× MUHAMAD, Natsir |
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学位授与機関 | ||||||
学位授与機関名 | 総合研究大学院大学 | |||||
学位名 | ||||||
学位名 | 博士(工学) | |||||
学位記番号 | ||||||
内容記述タイプ | Other | |||||
内容記述 | 総研大甲第201号 | |||||
研究科 | ||||||
値 | 数物科学研究科 | |||||
専攻 | ||||||
値 | 10 核融合科学専攻 | |||||
学位授与年月日 | ||||||
学位授与年月日 | 1996-03-21 | |||||
学位授与年度 | ||||||
1995 | ||||||
要旨 | ||||||
内容記述タイプ | Other | |||||
内容記述 | 壁コンディショニング法は,核融合実験装置において,プラズマ中に混入する不純物量を減らし,水素リサイクリングを抑え,これらの結果としてエネルギー閉じ込め時間等のプラズマパラメータを向上させるために必要とされている。これらの目的で,最近ボロニゼーションと呼ばれる方法が多くのトカマクで行われてきた。TEXTOR,DIII-D,JT-60Uなどでは150~300℃という壁温条件で適用され,水素リサイクリングを十分に抑える結果になっている。大型ヘリカル装置(LHD)では,このボロニゼーションが壁表面制御の主要な方法として考えられている。しかし,LHDの真空容器の温度は,100℃以下に制限されているため,ボロニゼーションで形成されるボロン膜中の水素濃度は十分低く抑えられず,リサイクリング抑制に問題がある。そこで,ボロニゼーションを行うときに利用されるグロー放電の制御によって,ボロン膜中の水素濃度を抑える新しい方法が要求されている。本論文の目的は,ボロン膜中の水素濃度測定法の開発,水素濃度のグロー放電パラメータの依存性の解明,これらを通じて,水素リサイクリング抑制に最適なグロー放電条件の把握の3点に要約される。さらに,ボロン膜中の水素濃度を決める物理機構についても議論し,ボロンコーティング過程の理解の深化を目指すものである。<br /> 水素濃度の測定,評価のため,3つの方法について改良,開発を行った。第1はフラッシュフィラメント(FF)法開発,第2は残留ガス分析(RGA)法改良,第3はイオンビーム分析法(IBA)改良である。この中で,特にFF法は,放電プラズマ中に置いたフィラメント上にコーティング膜を生成させ,コーティング終了後に通電加熱して脱離する水素量をRGAで定量するという単純な方法であり,コーティング直後にその場で短時間に膜中水素量を相対評価できる特徴をもつ。この測定法を確立した結果,多くの放電条件を比較的短時間に,系統的に調べることが可能になった。<br /> ボロニゼーション実験用に,実験装置PPT(Plasma Processing Teststand)という装置を建設した。コーテイング用のライナーを内蔵する小型の真空容器であり,結晶振動子法による膜厚計をもつ。また,ラングミュアプローブによって,グロー放電プラズマの電子密度,電子温度が測定できる。コーティングされる壁表面の温度は,赤外線カメラ,熱電対で測定される。<br /> ボロン膜はジボランまたはデカボランとヘリウム混合ガス中のグロー放電で形成される。この方法でのボロニゼーションによるボロン膜中水素量は,限られた条件について菅井らの報告がある。今回の研究では広い放電条件の範囲に対し,膜中吸蔵水素量の評価を初めて行った。具体的には,放電パワー ガス全圧力,排気速度,ガス流量,ヘリウムに対するジボランまたはデカボランの濃度の5つのパラメータに対し,膜中水素濃度がどのように依存するかを調べた。比較のために,100%のメタンガス中での放電による炭素膜中水素についても同様の方法で調べた。<br /> FF法による測定結果から明らかになったことは,「ボロン膜,カーボン膜ともに,膜の成長速度を速めるほど膜中の水素が減少する」という事実である。例えば,ジボラン,デカボラン,メタンのいずれを用いた場合にも,放電パワーを上げるほど成長速度が上がり,膜中の水素量は減少する。デカボラン/ヘリウム混合ガス放電の場合,全圧力を上げると膜成長速度が下がるのに対し,メタン放電では逆に圧力上昇に伴って成長速度が上がる。水素濃度減少が成長速度増加に対応することは両者に共通している。これらの結果は,プラズマ中における分子の解離が激しくなればなるほど膜の成長速度が速まり,同時に水素が遊離して膜に吸収されない確率も高まることを示唆している。<br /> 上記の実験ではもっぱらFF法を用いて吸蔵水素の相対的評価を行った。FF法のフィラメントは浮遊電位に置かれるため,浮遊電位にある表面と,陰極電位に置かれた表面とで,コーティング膜中の水素量がどのように異なるかをイオンビーム法(IBA)で調べた。IBAでは,1.5MeVのヘリウムイオンの水素による弾性散乱を利用して水素密度分布を測定するが,入射イオン束強度を決定する方法としてラザフォード後方散乱法(RBS)を組み合わせることにより,精度の高い測定が可能となった。これは,あらかじめ物性値のよくわかった材料を同一の幾何学的配置でRBS測定し,イオンビーム強度を逆算する方法で,今回の実験で新しく試みられたものである。<br /> IBAの結果,陰極電位にあるコーテイング膜中の水素密度が膜の厚み方向に一定であるのに対し,浮遊電位のものは表面からの深さが増すほど密度が減少すること,吸蔵水素総量は浮遊電位にあるものの方が少ないことがわかった。陰極電位にあるものは,膜生成にイオンと中性ラジカルの両方の寄与があるのに対し,浮遊電位のものは,中性ラジカルの寄与のみと考えられる。この実験の結果は,中性ラジカル成分による生成膜の水素吸蔵量がイオン成分のものに比べ小さいことを示している。また,全体としては中性ラジカルによる膜生成が支配的であることもわかり,FF法による相対的評価法が有効であることが確認された。<br /> ボロン膜生成機構と生成中の水素挙動についてモデルを考え,水素密度抑制機構について考察した。このモデルではグロー放電プラズマ,生成する膜表面,表面近くのバルク領域の3つの要素の相互作用が含まれる。プラズマ中の電子衝突による解離,中性ラジカルとイオンの入射,表面での個体原子との衝突による解離,衝突による水素脱離,表面での再結合脱離,脱離水素のポンプによる排気などのプロセスにより,膜生成と水素除去が進行する。実験結果を説明するには,プラズマ中での解離過程の果たす役割が大きいことが示された。<br /> 以上をまとめると,本論文の主要な結論は以下のようになる。<br />(1)FF法という新しい水素量測定法を開発し,新たに改良したIBA法によってその有効性を証明した。<br />(2)FF法の活用により,グロー放電の広い運転領域について系統的な水素吸蔵量比較を行い,ボロン膜成長速度が大きいほど,膜中水素濃度は低いという経験法則を発見した。<br />(3)イオン成分に比較し,中性ラジカル成分によって生成される膜の方が水素吸蔵量が小さいことがわかった。<br />(4)これらの実験的な結果を説明するモデルを提案した。特に,プラズマ中での解離過程が膜中水素濃度抑制に果たす役割の重要性を指摘した。 | |||||
所蔵 | ||||||
値 | 有 | |||||
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内容記述 | application/pdf |