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ニオブと水素原子の相互作用を利用した水素排気法とその核融合実験装置への適用に関する研究
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名前 / ファイル | ライセンス | アクション |
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Item type | 学位論文 / Thesis or Dissertation(1) | |||||
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公開日 | 2010-02-22 | |||||
タイトル | ||||||
タイトル | ニオブと水素原子の相互作用を利用した水素排気法とその核融合実験装置への適用に関する研究 | |||||
言語 | ||||||
言語 | jpn | |||||
資源タイプ | ||||||
資源タイプ識別子 | http://purl.org/coar/resource_type/c_46ec | |||||
資源タイプ | thesis | |||||
著者名 |
中原, 由紀夫
× 中原, 由紀夫 |
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フリガナ |
ナカハラ, ユキオ
× ナカハラ, ユキオ |
|||||
著者 |
NAKAHARA, Yukio
× NAKAHARA, Yukio |
|||||
学位授与機関 | ||||||
学位授与機関名 | 総合研究大学院大学 | |||||
学位名 | ||||||
学位名 | 博士(工学) | |||||
学位記番号 | ||||||
内容記述タイプ | Other | |||||
内容記述 | 総研大甲第592号 | |||||
研究科 | ||||||
値 | 数物科学研究科 | |||||
専攻 | ||||||
値 | 10 核融合科学専攻 | |||||
学位授与年月日 | ||||||
学位授与年月日 | 2002-03-22 | |||||
学位授与年度 | ||||||
2001 | ||||||
要旨 | ||||||
内容記述タイプ | Other | |||||
内容記述 | 核融合炉を実現するために、核融合反応に必要な高温・高密度のプラズマを長時間、安定に保持する必要がある。高性能プラズマを生成するためには、プラズマ周辺部での粒子リサイクリングを制御することが特に重要であるとされている。トカマク型核融合実験装置では、ダイバータを利用してプラズマ周辺部で能動的に粒子排気を行うこと(ダイバータ排気)によって、容器壁の粒子インベントリーを制御できることやプラズマの閉じ込め性能を改善できることが示されている。核融合科学研究所のヘリオトロン型核融合実験装置LHD(Large Helical Device)でも、プラズマ性能を向上させるために高効率でダイバータ排気することが提案されている。能率のよい排気を実現するため、既存の排気法に替わる方法としてVa族遷移金属と水素原子の相互作用を利用した水素排気法の開発研究が進められている。Va族遷移金属は、水素同位体の原子を効率良く吸蔵/透過することが知られている。この性質を利用して、ダイバータ板近傍で多量に発生する水素原子を効率良く除去すれば、高効率のダイバータ排気を実現できると考えられる。また、将来のD-T炉では核融谷反応で生じるヘリウムを定常的に排気する必要があるが、クライオポンプを使用するとヘリウムと共にトリチウムが吸着排気される。そこで、金属薄膜ポンプを設置して、排気ガスからトリチウムを選択的に分離/回収し、トリチウムインベントリーを低減することも提案されている。本研究は、Va族遷移金属の一つである二オブと水素原子の相互作用を利用した水素排気法を核融合実験装置のダイバータ排気へ適用するための開発研究の一環として行われた。<br /> 水素原子が二オブ薄膜(メンブレン)を透過する場合、その透過率は入射側表面およびその反対側表面での再結合係数の大きさによって決まる。再結合係数は表面での水素粒子の放出されやすさを示し、大きいほど放出されやすい。再結合係数は表面状態によって変化し、入射側表面で再結合係数が大きくなると透過率は減少する。真空中で加熱処理されたメンブレン表面は1原子層程度の酸素被膜に覆われていて、その不純物層の存在によって再結合係数が非常に小さくなっている。しかしながら、メンブレンを核融合実験装置内のダイバータ領域あるいはコアプラズマに対面する領域へ設置した場合、荷電交換反応で生じる高エネルギー水素原子等によるスパッタリングで薄膜表面の酸素被膜が除去され、透過性能が劣化する恐れがある。また、プラズマー壁相互作用によって第一壁やダイバータ板の材料である鉄を始めとする金属元素や炭素が薄膜表面に堆積した場合も、薄膜の表面状態が変化して透過性能が劣化する可能性がある。そこで、核融合実験装置内で予想される、高エネルギー水素粒子によるスパッタリングや金属元素/炭素堆積がメンブレンの水素原子に対する透過性能に及ぼす影響を明らかにするため、実験を行った。<br /> 実験は、ダイバータ排気を模擬するプラズマ実験装置PMTD(Plasma Membrane Test Device)を用いて行った。PMTDの円筒形真空容器内は、中心に設置された抵抗加熱可能な管状二オブ薄膜(厚さ0.2mmまたは0.3mm)によってプラズマ側と排気側に分離され、それぞれ複合分子ポンプで排気されている。プラズマ側では、熱陰極を利用した直流放電でメンブレン外側を囲むように中空円筒状水素プラズマが生成される。プラズマによって生じた水素原子束がメンブレンのプラズマ側表面へ入射すると、水素粒子がメンブレンを透過して排気側圧力が上昇する。透過した水素粒子束は、排気側の圧力変化から求められる。<br /> 高エネルギー水素粒子入射の影響に関する実験では、プラズマー薄膜間へ電圧(0-370V)を印加して水素イオンを表面へ照射し、その時の水素原子による透過束およびプラズマ側表面での再結合係数の変化を測定した。実験の結果、50V以上では電圧が高くなるに従って再結合係数が単調に増加し、透過束は単調に減少した。また、0-50Vの範囲では、10V付近で再結合係数の増加が極大となり透過束の減少が極小となる現象がこの実験で初めて観測された。この実験の結果から、薄膜表面に高エネルギー水素粒子が入射すると再結合係数が大きくなり、薄膜の水素原子に対する透過性能が劣化することが検証された。<br /> これは、薄膜表面の酸素被膜が除去されるためだと考えられる。酸素被膜を維持するために予めメンブレンに0.2at.%あるいは0.6at.%の酸素を溶解させて、メンブレン温度560-850℃で高エネルギー水素イオンを照射し、酸素溶解の効果を調べた。実験の結果、酸素を溶解させることで高エネルギー水素イオン照射による水素原子透過束の減少を小さくすることが出来、酸素濃度が0.2at.%よりも0.6at.%溶解させた場合に効果が大きかった。<br /> 酸素を溶解させた場合でも温度が低いと高エネルギー水素粒子照射による水素原子束の減少が見られた。以上の結果から、酸素濃度や薄膜温度を高くすることによって、薄膜の内部から表面への酸素の偏析が速やかに起こるようになり、表面の酸素被膜が維持されると考えられる。<br /> PMTDでは、円筒状プラズマの外側を囲むようにターゲットが設置されている。金属元素/炭素堆積の影響に関する実験では、プラズマーターゲット間に100-400Vの電圧を印加し、高エネルギー水素イオン照射によるスパッタリングで生じたターゲット材をプラズマ側表面へ堆積させて、メンブレンの水素透過性能に対する影響を調べた。ステンレス鋼をターゲット材に用いた実験では、プラズマ側表面にステンレス鋼成分の金属元素(主に鉄)が堆積すると水素原子の透過束が減少した。ステンレス鋼成分元素の堆積によって、プラズマ側表面での再結合係数が大きくなるためと考えられる。黒鉛をターゲット材に用いた実験でも、プラズマ側表面に炭素を堆積させると水素原子の透過束が減少した。堆積した炭素によって水素原子束が遮蔽され、メンブレン内部に到達できなくなるためと考えられる。ステンレス鋼成分元素/炭素堆積によって劣化したメンブレンの水素原子透過性能は、薄膜を約1200℃で数分間加熱することで元に戻すことが出来た。また、ステンレス鋼および黒鉛をターゲット材にしたいずれの実験でも、ステンレス鋼成分元素/炭素堆積時の薄膜温度を高くすると、不純物堆積による水素原子透過束の減少が小さくなり、ある温度(700-800℃)以上では不純物堆積の影響が見られなくなった。薄膜温度を高くすると、堆積した鉄や炭素の薄膜内部への拡散速度が大きくなり、表面に堆積した不純物が速やかにメンブレン内部へ拡散するため、表面での不純物密度が低くなるからだと考えられる。<br /> 二オブと水素原子の相互作用を利用した水素排気法実証のため、プロトタイプのポンプを作製し、核融合実験装置で実験を行った。厚さ0.2mm直径1.5cm長さ10cmの管状二オブ薄膜を2本用いたメンブレンポンプを作製し、日本原子力研究所のトカマク型核融合実験装置JFT-2M(JAWEI Fusion Torus-2M)のダイバー夕へ適用した実験では、プラズマ実験でメンブレンをダイバータプラズマにさらすと排気側での圧力上昇が観測され、ダイバータプラズマで生成される水素原子をメンブレンポンプによって排気できることを初めて実証した。この実験では、排気水素粒子束はダイバータ室の圧カP div ≦ 0.03Paの範囲でその圧力に比例し、P div = 0.03Paの時7.3×10 15 D cm-2s-1 であった。また、LHD実験への適用のために、二オブの水素原子吸蔵性を利用して水素を吸蔵排気するパネルポンプ(厚さ1mm縦横40cm×40cmの二オブ板)を作製した。高温金属(アトマイザ)表面での水素分子の熱解離によって生じる水素原子を利用した予備実験では、パネルポンプが十分な排気性能(吸蔵水素粒子束密度および吸蔵量)を有していることを確認した。LHDでの実験では、初期結果として約8時間のプラズマ実験で約0.02Pa m3の水素がパネルポンプに吸蔵されるということが分かった。この結果から、パネルポンプによって放電中に吸蔵される水素粒子束密度は平均すると3×10 13 H cm-2s-1であると推定される。<br /> 以上の研究成果から、ダイバータ排気を高効率化するための粒子排気法として、メンブレンポンプやパネルポンプの実用化の見通しが得られた。 | |||||
所蔵 | ||||||
値 | 有 |