WEKO3
アイテム
直線型プラズマ装置を用いたダイバータ部における不純物の原子過程及び輸送の研究
https://ir.soken.ac.jp/records/517
https://ir.soken.ac.jp/records/5178821f5d2-c28f-4729-82af-2ad197688725
名前 / ファイル | ライセンス | アクション |
---|---|---|
要旨・審査要旨 (426.1 kB)
|
Item type | 学位論文 / Thesis or Dissertation(1) | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
公開日 | 2010-02-22 | |||||
タイトル | ||||||
タイトル | 直線型プラズマ装置を用いたダイバータ部における不純物の原子過程及び輸送の研究 | |||||
言語 | ||||||
言語 | jpn | |||||
資源タイプ | ||||||
資源タイプ識別子 | http://purl.org/coar/resource_type/c_46ec | |||||
資源タイプ | thesis | |||||
著者名 |
杉本, 達律
× 杉本, 達律 |
|||||
フリガナ |
スギモト, タツノリ
× スギモト, タツノリ |
|||||
著者 |
SUGIMOTO, Tatsunori
× SUGIMOTO, Tatsunori |
|||||
学位授与機関 | ||||||
学位授与機関名 | 総合研究大学院大学 | |||||
学位名 | ||||||
学位名 | 博士(学術) | |||||
学位記番号 | ||||||
内容記述タイプ | Other | |||||
内容記述 | 総研大甲第892号 | |||||
研究科 | ||||||
値 | 物理科学研究科 | |||||
専攻 | ||||||
値 | 10 核融合科学専攻 | |||||
学位授与年月日 | ||||||
学位授与年月日 | 2005-09-30 | |||||
学位授与年度 | ||||||
値 | 2005 | |||||
要旨 | ||||||
内容記述タイプ | Other | |||||
内容記述 | 磁場閉じ込め型核融合実験装置におけるダイバータは、温度の高い主プラズマから流れ出した粒子を、磁力線によって主プラズマから離れたダイバータ領域へと導き、ダイバータ板によって中性化する構造を持ち、プラズマの粒子制御、不純物制御に大きな役割を果たしている。しかしダイバータ板はプラズマと壁が直接に接する唯一の場所であるため最も熱負荷を受け、プラズマとの相互作用も大きく、磁場閉じ込め型核融合実験装置の主要な不純物発生源となる。しかし不純物をダイバー夕領域に留まらせることが可能であれば、不純物の放射損失を利用しダイバータプラズマのみを局所的に冷却することによってダイバータ板の熱負荷を軽減し損耗抑制が期待できる。このように、ダイバータ部での不純物量とその分布を制御することは極めて重要な課題である。<br /> ダイバータプラズマ中の不純物分布についての研究は1970年代半ばのJFT-2Aでのダイバータ配位による不純物制御の実証が為され、その後、各国の磁場閉じ込め型核融合実験装置による観測と数値シミュレーションを用いた解析による理解が進められてきた。しかしダイバータ領域の複雑な幾何学的構造による影響もあり、不純物輸送特性の理解やそれに基づいた制御法という観点からは未だ課題が多い。<br /> そこで本研究では自然科学研究機構核融合科学研究所に設置してある直線型プラズマ実験装置TPD-IIを用いてダイバータ板前面の領域を模擬し、プラズマと模擬ダイバータ板としてのタニゲット板との相互作用によって生じたターゲット材料不純物のプラズマ内への流入とプラズマ中での輸送、特に磁力線方向へ輸送過程についての研究を行った。<br /> TPD.II装置で生成されるプラズマは直径2cm、長さ2mの円筒型の定常プラズマであり、そのパラメータも電子温度 数ev、電子密度1~8×10<SUP>19</SUP>m<SUP>-3</SUP>さらにターゲットに向かう流速が1~2×10<SUP>4</SUP>m/sと、ダイバータプラズマと同程度のパラメータでターゲットに向かう流れを持つ高密度プラズマである。実験にはヘリウムプラズマを用い、ターゲット材料には現在核融合炉壁材料として有力候補の一つである黒鉛を用いた。また本研究では不純物導入のためにターゲットに負バイアスを印加し、プラズマに対するターゲット板の電位を下げ、ターゲットヘのヘリウムイオン入射エネルギーをプラズマ-ターゲット板間のシース電場によって増加させ、物理スパッタリングを誘起し、ターゲット板からプラズマヘの炭素不純物導入を行つた。プラズマ中での炭素不純物分布を調べるため、プラズマ-ターゲット板との相互作用として生じた不純物としての炭素原子及びイオンのターゲット板からの距離に対する発光強度分布の観測を行った。発光強度の観測に用いた炭素原子及びイオンのスペクトル線はCI(247.86nm, 2p<SUP>2</SUP> <SUP>1</SUP>s-2p 3s <SUP>1</SUP>P<SUP>O</SUP>)、CII(283.76 nm, 2s2p<SUP>2</SUP> <SUP>2</SUP>S-2s<SUP>2</SUP> 3p <SUP>2</SUP>P<SUP>O</SUP>)、CIII(229.69nm, 2s2p <SUP>1</SUP>P<SUP>o</SUP>-2p<SUP>2</SUP> <SUP>1</SUP>D)である。これらの線はいずれも基底状態に近い励起準位からの発光であるため、発光強度の絶対値を求め、コロナモデルを用いた密度換算を行い、炭素原子及びイオンのターゲツト板からの距離に対する密度分布を得た。<br /> 原子過程及び輸送を解析する時に必要となるプラズマの電子温度、電子密度の空間分布は、ヘリウム原子からの発光スペクトルとヘリウム原子の衝突放射モデルによって得られるスペクトルを比較し求めた。結果として放電電流100A、負バイアス印加時でターゲット電圧-100Vの時、磁力線方向への平均値として電子温度6eV、電子密度3×10<SUP>19</SUP>m<SUP>-3</SUP>を得た。<br /> 実験で得られた炭素原子及びイオンの密度分布と、炭素の各電離状態における電離及び再結合による密度増減と磁力線を横切って消失する径方向拡散に古典拡散を仮定した密度減少を考慮した流体における連続の式と衝突効果(摩擦力)を考慮した運動方程式による一次元の不純物輸送モデルを用いて輸送解析を行った。<br /> 放電電流100A、負バイアス印加時でターゲット電圧-100Vの時、炭素原子のプラズマヘの流入速度は、バックグラウンドプラズマの電子温度・電子密度を基に、炭素原子の電離による緩和時間と、実験で得られた炭素原子の密度分布から1.6×10<SUP>4</SUP>m/s を得た。この値は物理スパッタリングで叩き出されるターゲット材料原子のエネルギー分布を算出するのに用いられるThompsonの式によって得られる速度とも一致した。<br /> そして実験で得られた炭素原子及びイオンの密度分布に基づき、1価及び2価の炭素<br />イオンの流速、流束、運動量バランスを導出した。以後の説明においてターゲットから離れる方向を正とする。1価のイオンはターゲット板前面において正の方向の速度を持ち、ターゲットから離れるに従い次第に減速、そして負の流れへと変化し、ターゲットから50 cm以上はなれた上流側ではバックグラウンドプラズマとしてのヘリウムイオンと同程度の流速を持つことがモデル計算の結果として得られた。この結果は、ターゲット前面においてターゲットから生じた炭素原子はプラズマ内に流入後電離しイオンとなり、生成された1価の炭素イオンは原子の時の速度を引き継ぐのでイオン化直後は正の速度を持つが、イオンとなることによってバックグラウンドプラズマとしてのヘリウムプラズマ中のヘリウムイオンとのクーロン衝突による摩擦力が増大し、1価の炭素イオンの流速は次第に減速、負の流れへと変化することを示している。このことから1価の炭素イオンがヘリウムプラズマ中のヘリウムイオンとのクーロン衝突によってターゲット側に押し戻される摩擦力の効果が示された。<br /> また、2価の炭素イオンはターゲット板前面において負の方向、すなわちターゲットに向かう方向への流束を持つことがモデル計算の結果として得られ、これにより2価の炭素イオンがヘリウムプラズマ中のヘリウムイオンとのクーロン衝突による摩擦力によって、ターゲット側に押し戻されていることを示された。ターゲット板前面では正の方向に向かう1価の炭素イオンから2価の炭素イオンヘと電離し、1価の速度を引き継いで正の方向に向かう2価の炭素イオンが存在するため、ターゲット板前面での2価の炭素イオンの流速は正に向かう流れとバックグラウンドプラズマに押し戻された負の流れが重なり合い、その結果、ターゲットに近いほど負の流速は減少する。この正の方向に向かう2価の炭素イオンによる速度変化はターゲット板から50cm程度の範囲で起こり、それより上流では1価の炭素イオンと同様、ヘリウムプラズマの流れと同程度の流速を持つ。<br /> 以上の結果から、物理スパッタリングによってターゲット板からプラズマ内に流入した不純物原子はプラズマ中を進行する過程において電離することでバックグラウンドプラズマのイオンとのクーロン衝突による摩擦力の影響を受けるようになり、ターゲット板へと押し戻されるようになる事が明確に示され、このことから本研究では不純物イオンの密度分布及び速度分布に対する摩擦力の効果、磁力線方向への不純物輸送に対するパックグラウンドプラズマ流の影響を示した。<br /> さらに本研究において、物理スパッタリングの損耗率から炭素は殆ど発生しないと考えられるターゲット板への負バイアス印加を行わない場合にも、炭素がプラズマ内に高いエネルギーを持って流入しプラズマ中に分布している実験結果を得た。炭素原子の発生量としては負バイアス印加時と比べて1/4に減少しているものの、空間密度分布は負バイアス実験と同程度の広がりを持っていた。このときの炭素原子の流入速度をターゲット前面での炭素原子密度の電離による減少から求めると、負バイアス印加時と同程度の速度2×10<SUP>4</SUP>m/sとの結果が得られた。<br /> ターゲットに負バイアス印加を行わない、物理スパッタリングでの炭素発生が非常に少ないと考えられる条件下で、炭素の流入及びその流入速度が物理スパッタリング時と同程度であると観測された理由について、本研究ではプラズマと団体材料壁の相互作用に関しては深く研究が進められたものではないが、物理スパッタリングの予想を超える炭素のプラズマヘの流入と侵入長から導き出される高いエネルギーを持った炭素原子のスパッタが実験結果から結論される。この実験結果について、炭素材のみに見られる照射促進昇華(Radiation-Enhanceo Sublimation)のメカニズムと同様に、ヘリウムイオンとの衝突によって生じた格子間原子がスパッタを受けたものと考えており、この結果は炭素ターゲットの特性を示したものとして意義あるものである。 | |||||
所蔵 | ||||||
値 | 有 |