WEKO3
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/\u003eねた.日本では,「健康」,「余暇」,「身の安全」,「家族関係」,「交友関係」の順に重要度が高\u003cbr /\u003eく,最も低かったのは「自尊心・自慢」であった.韓国では,重要度が高いのは「コミュニ\u003cbr /\u003eティ活動」,「自己表現・自分らしさ」,「余暇」で,最も低いのは「身の安全」であった.次\u003cbr /\u003eに13の生活領域においてモバイル情報サービスの利用が生活の質の向上にどれくらい寄与\u003cbr /\u003eするかをたずねた.日本と韓国では,重要と考える生活領域と,モバイル情報サービスが生\u003cbr /\u003e活の質に寄与するとされる生活領域が異なることが明らかになった.日本のモバイル情報サ\u003cbr /\u003eービス利用者は「身の安全」,「家族関係」が重要であると考えており,かつ,モバイルイン\u003cbr /\u003eターネットがこれらに寄与すると評価された.韓国のモバイル情報サービス利用者は,「コミ\u003cbr /\u003eュニティ活動」と「自己表現・自分らしさ」,「自尊心・自慢」が重要であると考えており,\u003cbr /\u003eかつ,モバイルインターネットがこれらに寄与すると評価された\u003cbr /\u003e\u003cbr /\u003e次に日本人の生活時間統計に関する文献調査およびアンケート調査を行い,利用者個人の\u003cbr /\u003e携帯電話の利用目的と生活の質を関係づけて分析を試みた.まず,NHK放送文化研究所が\u003cbr /\u003e行った調査に準じて生活時間を分析した.15歳以上の男女の生活時間を,1)学業仕事,家事\u003cbr /\u003eなどの拘束時間,2)余暇,娯楽,交際などの自由時間と3)食事,睡眠などの必需時間に分類\u003cbr /\u003eした.その時間配分をライフスタイルと考えた.職業別,男女・年代別に,学業・仕事・家事\u003cbr /\u003eなどの拘束行動の時間配分に差があることが明らかになった.そこで即時性利便性の高い携\u003cbr /\u003e帯電話を活用することにより,拘束行動の効率化,分散化が進み生活の質を向上するとの仮説\u003cbr 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モバイル情報サービスによる個人の生活とコミュニティの質の向上に関する研究
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名前 / ファイル | ライセンス | アクション |
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Item type | 学位論文 / Thesis or Dissertation(1) | |||||
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公開日 | 2010-02-22 | |||||
タイトル | ||||||
タイトル | モバイル情報サービスによる個人の生活とコミュニティの質の向上に関する研究 | |||||
タイトル | ||||||
言語 | en | |||||
タイトル | A Study on Mobile Information Service for Quality of Life and Community | |||||
言語 | ||||||
言語 | jpn | |||||
資源タイプ | ||||||
資源タイプ識別子 | http://purl.org/coar/resource_type/c_46ec | |||||
資源タイプ | thesis | |||||
著者名 |
成瀬, 一明
× 成瀬, 一明 |
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フリガナ |
ナルセ, カズアキ
× ナルセ, カズアキ |
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著者 |
NARUSE, Kazuaki
× NARUSE, Kazuaki |
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学位授与機関 | ||||||
学位授与機関名 | 総合研究大学院大学 | |||||
学位名 | ||||||
学位名 | 博士(情報学) | |||||
学位記番号 | ||||||
内容記述タイプ | Other | |||||
内容記述 | 総研大甲第1047号 | |||||
研究科 | ||||||
値 | 複合科学研究科 | |||||
専攻 | ||||||
値 | 17 情報学専攻 | |||||
学位授与年月日 | ||||||
学位授与年月日 | 2007-03-23 | |||||
学位授与年度 | ||||||
2006 | ||||||
要旨 | ||||||
内容記述タイプ | Other | |||||
内容記述 | 携帯電話は世界中に普及し,ユビキタスコンピューティングの典型であるモバイル情報サ<br />ービスは,時間や場所を超越して多目的に利用されている.情報通信技術により日常生活が<br />便利で豊かになる反面,コンピュータ犯罪の被害にあう機会も増えている.情報通信技術が<br />人々の生活にもたらす「光」の部分を伸ばし「影」の部分を最小にする努力が求められる.本研<br />究では「光」すなわち利便性の側面に焦点を当てる.従来の情報通信技術の研究は,ある技術<br />が特定の目的を達成する際にどれほど有用で簡単か,仕事を実行する過程でどれほど満足か,<br />を基準に測定されてきた.いっぽうユビキタスコンピューティングは,さまざまに関連した<br />日常生活の場面で扱われるため,生活そのものと区別することがより困難である.生活の質<br />とは,人々がどれほど幸福と感じているか,必要や要求が満たされているかに関する尺度と<br />いえよう.生活の質の研究を通じて,人間には,場所,事,活動,役割や関係などに基づき<br />数多くの生活領域が存在することが明らかにされてきた.例えば余暇家庭,友人,文化,<br />仕事,教育,コミュニティ,消費者,金融,精神,社会,健康と安全,近所づきあい,内面<br />などの生活領域があげられる.モバイル情報サービスは,時間と場所を超越して利用されるこ<br />とから,これらの生活領域に影響を及ぼす潜在的な可能性がある.<br />そこで本研究では,モバイル情報サービスが人々の生活の質とコミュニティの質の向上に<br />資することを明らかにし,モバイルサービス開発の設計指針を得ることを目的とする.<br />具体的には,まずモバイルユ「ザの利用目的を定量的に分析することにより,個人の利<br />便性を向上する潜在的な利用法を明らかにする.さらに,地域コミュニティにおける相互扶<br />助活動を調査・分析し,モバイル情報サービスがコミュニティの質を向上する潜在的な利用<br />方法を定性的に整理し分析する.<br /><br />まず,全体としての生活の質(QualityofLife)は個々の生活領域の満足の結果であると<br />するプレテストに基づき,調査対象とする生活全体を13の生活領域(サブドメイン)に分類<br />した.日本と韓国で「生活の質」に関してそれぞれの生活領域がどの程度重要であるかを尋<br />ねた.日本では,「健康」,「余暇」,「身の安全」,「家族関係」,「交友関係」の順に重要度が高<br />く,最も低かったのは「自尊心・自慢」であった.韓国では,重要度が高いのは「コミュニ<br />ティ活動」,「自己表現・自分らしさ」,「余暇」で,最も低いのは「身の安全」であった.次<br />に13の生活領域においてモバイル情報サービスの利用が生活の質の向上にどれくらい寄与<br />するかをたずねた.日本と韓国では,重要と考える生活領域と,モバイル情報サービスが生<br />活の質に寄与するとされる生活領域が異なることが明らかになった.日本のモバイル情報サ<br />ービス利用者は「身の安全」,「家族関係」が重要であると考えており,かつ,モバイルイン<br />ターネットがこれらに寄与すると評価された.韓国のモバイル情報サービス利用者は,「コミ<br />ュニティ活動」と「自己表現・自分らしさ」,「自尊心・自慢」が重要であると考えており,<br />かつ,モバイルインターネットがこれらに寄与すると評価された<br /><br />次に日本人の生活時間統計に関する文献調査およびアンケート調査を行い,利用者個人の<br />携帯電話の利用目的と生活の質を関係づけて分析を試みた.まず,NHK放送文化研究所が<br />行った調査に準じて生活時間を分析した.15歳以上の男女の生活時間を,1)学業仕事,家事<br />などの拘束時間,2)余暇,娯楽,交際などの自由時間と3)食事,睡眠などの必需時間に分類<br />した.その時間配分をライフスタイルと考えた.職業別,男女・年代別に,学業・仕事・家事<br />などの拘束行動の時間配分に差があることが明らかになった.そこで即時性利便性の高い携<br />帯電話を活用することにより,拘束行動の効率化,分散化が進み生活の質を向上するとの仮説<br />を置いた.続いて,ライフスタイルと携帯電話利用の関連を調査するために,携帯電話の利用<br />者約5,700名にインターネットでアンケートを実施し,携帯電話の利用目的を,拘束行動と<br />自由行動に分けて尋ねた.カイ2乗検定によって性・年齢と利用目的の間には関係があるこ<br />とが検証された.対応分析を行い,両因子を関係付ける因子項目を抽出・解釈した結果、1)実<br />用性因子と,2)時間的制約因子と定義した.<br />コレスポンデンス分析の結果を2次元チャートに展開し,各々の対応関係を距離およびベ<br />クトルで図示した.携帯電話を拘束行動において利用する際には実用性因子と,時間制約因子<br />のいずれかまたは両方の得点が高い傾向を示した.年齢の増加に応じて男性は実用性因子,<br />女性は時間制約因子の増加する割合が高いことが示された.<br />携帯電話の利用者は生活時間を効率的に利用して自由行動や拘束行動を改善するために携<br />帯電話を利用するという仮説を立て,携帯電話の利用目的の相関を示す対応チャートの説明<br />を行った.拘束時間が最も長い30,40歳代では携帯電話がライフスタイルの改善に密接に<br />関連していること,拘束時間が減少する50歳以上では男女共に時間制約因子が低下すること<br />を対応分析チャートに基づき明らかにした.<br /><br />2004年11月に日本と韓国のモバイル情報サービス利用者を対象に実施した国際アンケー<br />ト調査の結果,日本ではコミュニティが生活の質の向上に重要だと評価されなかった.しか<br />し,今後コミュニティ活動に対する社会的ニーズが高まると期待される.拘束時間が少ない<br />50歳以上の年齢層が地域のコミュニティ活動を支援していることから,携帯電話を利用した<br />地域通貨システムがコミュニティの活性化に有効であると考えた.そこで地域のコミュニテ<br />ィ活動を支援する地域通貨を社会情報システムと捉えて調査した。同調査では,国内文献調<br />査,インタビュー調査に基づきソフトシステムズ方法論によりコミュニティ内の構成メンバ<br />の役割や多様な活動目的を表現し,サービス交換,コーディネート,社会認知などの主要な機<br />能を分析し活動モデルを作成し,実際に利用されている85種類のサービスメニューを分析し<br />た.それによると,サービス利用者側には,安全,健康,余暇,交友などの生活領域に対す<br />るニーズが多かった.一方,サービス提供者側には,自己表現,文化,教育などの生活領域<br />に対するニーズが多いことがわかり,利用者ニーズと提供者ニーズに齟齬が存在する状況が<br />明らかとなった.このミスマッチを解消するために,携帯電話を利用した地域通貨システム<br />を運用することとした.この実験では,予約・取引・決済・照会などの処理機能を備えた携<br />帯電話を配布し,これを利用した地域サービスの交換支援システムを運用した.そして,関<br />係者を対象として,デモンストレーションを行い,その後,書面によるアンケート調査を実<br />施した.<br />調査の結果によると,携帯電話の画面などの操作性に関する機能は,すでに完成度が高い<br />との評価を得た.一方,利用者と提供者が相互に顔見知りであることが,モバイル情報サー<br />ビスの内容を充実させるための条件であることが指摘された.<br />従来の地域通貨では,個人情報が会員向け冊子やサーバで共有・管理され,コーディネ<br />ータが利用者と提供者の間でサービスを仲介する.これに対して本システムは,携帯電話を<br />利用しているため,コーディネータを不要とし,個人情報を安全に分散管理することを可能<br />にする.また,本システムは,プライバシー侵害の懸念を持つ利用者のコミュニティへの参<br />加意識を高めることを可能にする.以上より,本論文は,地域通貨を適用したモバイル情報<br />サービスであるモバイルLETSは,利用者と提供者双方の利用ニ一ズと提供ニーズを満足<br />し,全体としてコミュニティの質を高める効果があることを定性的に示した.<br /><br />これらの研究の結果,モバイル情報サービス開発の設計指針として,新たに以下の知見が<br />得られた.第一に,拘束時間が最も長い30才以上の中高年代に対しては,時間的制約を緩和<br />するモバイル情報サービスが有効である.第二に,男女別にみると,男性に対しては,目的<br />指向の高いモバイル情報サービスが有効であり,女性に対しては,家事など実用性の高いモ<br />バイル情報サービスが有効である.<br />モバイル情報サービスが適切なプライバシー管理を行うことによって,地域コミュニティ<br />におけるメンバ間の相互扶助活動が活性化する.具体的には,第一に,サービス利用者の利ズ<br />用ニーズとサービス提供者の自己表現ニーズの両方が充足され,個人の生活の質が向上し,<br />第二に,全体としてコミュニティの質が向上する.<br />以上より,本研究はモバイル情報サービスが個人の生活とコミュニティの質の向上に資す<br />ることを明らかにした. | |||||
所蔵 | ||||||
値 | 有 |