Item type |
学位論文 / Thesis or Dissertation(1) |
公開日 |
2010-03-24 |
タイトル |
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タイトル |
論理LSIにおける放射線誘起シングルイベント過渡パルスとソフトエラー率に関する研究 |
言語 |
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言語 |
jpn |
資源タイプ |
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資源タイプ識別子 |
http://purl.org/coar/resource_type/c_46ec |
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資源タイプ |
thesis |
著者名 |
牧野, 高紘
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フリガナ |
マキノ, タカヒロ
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著者 |
MAKINO, Takahiro
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学位授与機関 |
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学位授与機関名 |
総合研究大学院大学 |
学位名 |
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学位名 |
博士(工学) |
学位記番号 |
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内容記述タイプ |
Other |
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内容記述 |
総研大甲第1228号 |
研究科 |
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値 |
物理科学研究科 |
専攻 |
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値 |
11 宇宙科学専攻 |
学位授与年月日 |
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学位授与年月日 |
2009-03-24 |
学位授与年度 |
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値 |
2008 |
要旨 |
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内容記述タイプ |
Other |
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内容記述 |
衛星に搭載された論理LSIは、軌道上を飛び交う放射線によって一時的な誤動作を起こ<br />す。この一時的な誤動作をソフトエラーと呼ぶ。ソフトエラーの一つとして、シングルイ<br />ベントアップセット現象(Single Event Upset : SEU) がよく知られている。SEUは、メ<br />モリLSIと同様に論理LSI中の記憶素子に放射線(例えば重イオン)が入射することで生<br />じるデータ反転(ソフトエラー)であり、これまで様々な研究や対策がとられてきた。近<br />年もう一つのソフトエラーとして、シングルイベント過渡現象(Single Event Transient:<br/>SET)が新たに顕在化してきた。SETは、論理LSI中の論理素子にイオンが入射する事<br />で生じる過渡的な電圧変動であり、その過渡電圧パルス(SETパルス)が回路中を伝播し<br />ラッチ等記憶素子の状態を変える事でソフトエラーを引き起こすものである。SETによ<br />るソフトエラーの発生頻度(<i>SER<small>SET</small></i>)は、論理素子で発生するSETパルスの時間幅と、論<br />理LSIの動作周波数の増加に伴って大きくなる事が指摘されており、今後、論理LSIの<br />更なる高速化によって<i>SER<small>SET</small></i>の増加が懸念されている。しかし、<i>SER<small>SET</small></i>を見積も<br />る手法や、<i>SER<small>SET</small></i>を低減するための対策がないのが現状である。<br /><br /> これまでに、SETパルスが記憶素子にラッチされる確率をSETパルス幅の関数で求<br />める事ができると言われていた。また、発生するSETパルス幅はイオンの入射位置に<br />よって異なるために、単一線エネルギー付与(LET)のイオンを照射しても、SETパルス<br />幅が分布を持つ事が報告されている。以上の事をふまえ、種々の論理素子の正確なSET<br />パルス発生率をパルス幅の関数(SETパルス発生率)として測定し、その発生率と各パル<br />スが記憶素子にラッチされる確率から、種々の論理素子における<i>SER<small>SET</small></i>が推定できる<br />と考えられていたが、実証されていなかった。また、SETパルス幅分布が入射放射線の<br />LETに依存する事も報告されているが、LET依存性の詳細とSETパルス幅を支配する<br />要因についてはわかっていない。SETパルス幅分布のLET依存性と、パルス幅の決定要<br />因を明らかにできれば<i>SER<small>SET</small></i>低減策の提案につながると考えた。そこで本研究では、<br />SET対策のために必要な基礎的知見を得るため、1)SETパルス発生率の測定とソフトエ<br />ラー率の推定、2)SETパルス幅のLET依存性測定、3)シミュレーションによるSET<br />パルス幅LET依存性の要因解明、の検討をした。 <br /><br />1)SETパルス発生率の測定とソフトエラー率の推定<br /> SETパルス発生率をSETパルス幅の関数として測定し、その発生率にそれぞれの時間<br />幅をもった記憶素子にラッチされる確率を乗じることでそれぞれのパルスの時間<br />幅での<i>SER<small>SET</small></i>を求め、それらを積分する事で論理素子の<i>SER<small>SET</small></i>を推定できると考<br />えられていたが、これまで実証されていなかった。そこで、本手法実証のため、Snapshot<br />回路を用いて、NOR素子内に発生するSETパルス発生率を測定した。Snapshot回路は<br />試験対象論理素子で発生したSETパルスを " 000..111..000"のようにビット列で取得す<br />る。取得された"1"の数はSETパルス幅に対応しており、テストパルスによって予め<br />得られている"1"の数とパルス幅の関係を用いて、発生したSETパルス幅を算出する<br />事が出来る。Snapshot回路とNOR素子は、ゲート長0.2μm完全空乏型SOI(0.2μm<br />FD-SOI)技術で作製されている。測定は原子力機構の加速器施設(TIARA)で行い、Kr<br />322 MeV/ion LET=40 MeV・cm<sup>2</sup>/mg(宇宙でのLSIの耐放射線性を議論する際の評価<br />基準値)を照射した。本測定では、試験対象素子へのイオン照射量を正確に知る事が必須<br />であるため、照射場で使用する放射線検出器と最適な照射量を十分検討した上で実験を<br />行った。照射粒子束を、3.5 x 10<sup>4</sup> particles / cm<sup>2</sup>・s程度に制御して照射を行った。測定<br />の結果、NOR素子内に誘起されるSETパルスの幅は0.l ns程度から1.1 nsにわたって<br />分布していた。この発生率とラッチ確率を用いて求められた<i>SER<small>SET</small></i>(=1.32 × 10<sup>-10</sup><br />cm<sup>2</sup>)は、<i>SER<small>SET</small></i>測定用に別途作製したスキャンフリップフロップ(FF)を実装した論<br />理LSIの<i>SER<small>SET</small></i> (=1.15 × 10<sup>-10</sup> cm<sup>2</sup>)と非常によい一致を示した。この事より、論<br />理素子内でのSETパルス発生率から<i>SER<small>SET</small></i>が求められる事を初めて実証した。本手 <br />法を用いることで、SETパルス発生率測定結果から、論理LSIの動作周波数が変わっ<br />た時のSER<small>SET</small>を推定できることになった。<br /><br />2)SETパルス幅分布のLET依存性測定<br /> SETパルス幅分布のLET依存性を知るため、0.2μm FD—SOI技術で作製されたNOT<br />素子にLETを変えた数種のイオンを照射し、それぞれのイオンで誘起されるSETパル<br />ス幅分布をSnapshot回路を用いて測定した。本測定では、Kr 322 MeV/ion、Xe 454<br />MeV/ion のイオンを用いて広範囲のLETを得る必要があ<br />る。そのため、イオンの入射角度を変えた照射(実効LETの考え)によってLET=40,<br />56, 62, 68, 92(MeV・cm<sup>2</sup>/mg)での照射を可能とした。パッシベーション膜下のSi活性<br />層表面への入射LETの計算は、SRIMコードを用いて行った。測定の結果、全てのLET<br />においてNOT素子内に誘起されるSETパルスの時間幅は0.l ns程度から1.0 nsにわ<br />たって分布することがわかった。各LETで取得されたSETパルス幅分布の中でも最<br />も多く検出されたSETパルス幅(最頻値)をLETに対してプロットすると、SETパル<br />ス幅はLET=40〜92(MeV・cm<sup>2</sup>/mg)の範囲でほぼ一定であった。また、SETパルス<br />幅は、LET = 0において0になるはずである。これらのことにより、宇宙応用を考えて先<br />端SOI技術で作製されるNOT素子にSET対策を施す際は、考慮すべき最大パルス幅を<br />1.0 nsとすればよいことがわかった。また、発生するSETパルス幅の最大値と最頻値が<br />NOR素子に比べNOT素子で短かったため、<i>SER<small>SET</small></i>は1)で述べたNOR素子に比べ<br />NOT素子で小さくなると期待できる。 <br /><br />3)シミュレーションによるSETパルス幅LET依存性の要因解明<br /> SETパルス幅を支配する要因を明らかにするため、三次元デバイス回路混合シミュ<br />レーション(3DMixed=Mode Simulation)を行った。3D Mixed−Mode Simulationは、<br />論理素子を構成する複数の素子のうち、放射線が当たった素子だけを数値モデルで再現<br />し、それ以外の素子をSPICE等の等価回路モデルで再現する。これら異なるモデルにつ<br />いて、互いの境界条件を時々刻々と変えながら同時に解く方法である。シミュレーション<br />は、NOT素子内のn 型 FD—SOI MOSFETのBody中心から50 nm Drain寄りにイオ<br />ンが入射したと仮定し、NOT素子での電圧パルスを求めた。実験をより正確に再現する<br />には、イオンがデバイス中に生成する電荷の分布を正確に入力する必要があるが、これま<br />ではガウス関数型の簡易的なイオンモデルしか用いられてこなかった。そこ<br />で、個々のイオンについてKobetichとKatzの理論を基に現実的な電子正孔対分布を求<br />め、独自の手法でシミュレータに導入した。SETパルス幅のLET依存性を、キャリア再<br />結合をシミュレーションモデルにおいて考慮しない場合と考慮した場合でシミュレーショ<br />ンした。その結果、再結合を考慮しない場合のSETパルス幅はLETの増加に伴って増<br />加したのに対し、再結合を考慮しない場合SETパルス幅は実験結果と同様にLETの増<br />加に伴って飽和傾向を示した。また、再結合を考慮した場合、考慮しない場合に比べSET<br/ >パルス幅は短くなった。再結合がSETパルス幅の増加傾向を抑制する一つの要因である<br />事が初めて明らかとなり、SET低減には再結合に寄与するデバイスパラメータ制御が<br />有効であると考えられる。 |
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