WEKO3
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\u003ci\u003eT\u003c/i\u003em(\u003ci\u003eT\u003c/i\u003em:融点)\u003cbr /\u003e以上の高温で顕著となり、室温が0.15 \u003ci\u003eT\u003c/i\u003emとなるTi合金では、設計上クリープ変形は考慮\u003cbr /\u003eされない。つまり、クリープ変形が考慮されない温度域且つ降伏応力以下の低応力域でク\u003cbr /\u003eリープ(室温クリープ)が発生した場合、予想外の事故に見舞われる危険性があるため、\u003cbr /\u003e本論文では室温クリープ機構を解明することを目的とした。\u003cbr /\u003e 初めに、様々な結晶構造を有する金属及び合金を用いて、室温クリープが発生する材料\u003cbr /\u003eの判別を行った。これより、六方晶構造を有する全ての材料で室温クリープが発生し、概\u003cbr /\u003eね10\u003csup\u003e-9\u003c/sup\u003e s\u003csup\u003e-1\u003c/sup\u003e程度の定常クリープ速度を示すことが分かった。この時、六方晶純金属の応力指\u003cbr /\u003e数(\u003ci\u003en\u003c/i\u003e)は約3であり、見かけの活性化エネルギー(Q)は、20 kJ/molとなった。\u003cbr /\u003e 次に、なぜ室温クリープが六方晶材料のみで観察されるのか、透過型電子顕微鏡(TEM)\u003cbr /\u003e及び光学顕微鏡(OM)を用いて変形組織を観察した。TEM観察より、六方晶金属(工業用\u003cbr /\u003e純チタン(CP-Ti)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn))において観察された転位は、直線的で、\u003cbr /\u003e転位同士の切り合いが無く、一つのすべり系しか活動していないことが分かった。また、\u003cbr /\u003e軸比の差異による転位構造の変化は観察されなかった。正方形を基本とした立方晶構造で\u003cbr /\u003eは、すべりを起こしやすいすべり系が粒内に12個存在する。一方、六角形を基にした六方\u003cbr /\u003e晶構造では、2個と少ない。つまり、活動しやすいすべり系が多い立方晶構造では、多く\u003cbr /\u003eのすべり系で転位が運動するため、転位同士が絡まり加工硬化して、クリープが発生しな\u003cbr /\u003eいが、六方晶構造では転位同士の絡まりが発生しにくい(加工硬化の速度が遅い)ため、\u003cbr /\u003e転位は自由に結晶粒内を運動でき、室温クリープが発生したと考えている。\u003cbr /\u003e OM観察はCP-TiとMgを使用し、室温クリープに対する変形双晶の影響を調査した。\u003cbr /\u003eCP-Tiでは、純度が高くなるにつれ変形双晶の発生が顕著になるため、2つの純度の異な\u003cbr /\u003eる試料を準備し、変形挙動の違いを観察した。またMgでは、引張及び圧縮クリープ試験\u003cbr /\u003eを実施した。これは、圧縮と引張では変形双晶の発生頻度に違いがあるためである。CP-Ti\u003cbr /\u003eによる試験の結果は、より高純度な試料において、変形双晶の発生を観察したが、クリー\u003cbr /\u003eプひずみは小さかった。Mgにおいては、圧縮クリープ試験後の試料から、顕著な双晶の\u003cbr /\u003e発生を確認したが、クリープひずみは生まれなかった。つまり、室温クリープに対する、\u003cbr /\u003e変形双晶の影響は低いといえる。よって、六方晶金属の室温クリープは、転位の運動が主\u003cbr /\u003eたる変形機構であることが明らかとなった。\u003cbr /\u003e しかし、粒内で転位運動に障害がない場合、転位は粒界に堆積して、クリープ変形を停\u003cbr /\u003e止させることが考えられるが、長期のクリープ試験から、変形は停止しないことが明らか\u003cbr /\u003eとなった。つまり、転位は粒界において緩和されている可能性がある。そこで、粒径を変\u003cbr /\u003e化させた試料を用いて、後方散乱電子回折(EBSD)法及び原子間力顕微鏡(AFM)より、\u003cbr /\u003e室温クリープにおける粒界の影響を調査した。\u003cbr /\u003e 従来の高温側の転位クリープでは、粒径依存性は観察されないが、室温クリープでの粒\u003cbr /\u003e系指数(\u003ci\u003ep\u003c/i\u003e)は約1が得られた。これは、転位運動が粒界の影響を受けている証拠である。\u003cbr /\u003eまたAFMより、クリープ変形中の粒界すべりの発生、EBSD法より、転位が粒界近傍に堆\u003cbr /\u003e積していることが分かった。室温クリープではQ値が低いことから、拡散による粒界すべ\u003cbr /\u003eりは観察されない。そこで、Q=15 kJ/mol程度と見積もられ、室温クリープのそれと近い、\u003cbr /\u003eすべり誘起の粒界すべり機構の適用が考えられる。この場合、律速過程は粒界での転位の\u003cbr /\u003e吸収で、その後、吸収された転位が粒界内を運動することで粒界すべりを生み出す。\u003cbr /\u003e 以上から、室温クリープとは、結晶粒内の転位運動と粒界でのすべり誘起の粒界すべり\u003cbr /\u003eの連続的な発現によって発生する現象であることが明らかとなり、従来から報告のある転\u003cbr /\u003e位クリープとは異なる機構で変形することが分かった。この結果を受け、Ashbyの変形機\u003cbr /\u003e構領域図に新たに、室温クリープ領域を加筆した。また、室温クリープの構成方程式を以\u003cbr /\u003e下のように、定義することが可能となった。\u003cbr /\u003e\u003csub\u003e.\u003c/sub\u003e Q μb σ \u003ci\u003eb\u003c/i\u003e\u003cbr /\u003e \u003cbig\u003e\u0026epsilon;\u003c/big\u003es = \u003ci\u003eAD\u003c/i\u003e\u003csmall\u003e0\u003c/small\u003e exp\u003cfont size=\"4\"\u003e(\u003c/font\u003e−----- \u003cfont size=\"4\"\u003e)\u003c/font\u003e\u003cfont 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室温における六方晶金属特有の新たなクリープ機構の解明
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名前 / ファイル | ライセンス | アクション |
---|---|---|
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Item type | 学位論文 / Thesis or Dissertation(1) | |||||
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公開日 | 2011-01-17 | |||||
タイトル | ||||||
タイトル | 室温における六方晶金属特有の新たなクリープ機構の解明 | |||||
言語 | ||||||
言語 | jpn | |||||
資源タイプ | ||||||
資源タイプ識別子 | http://purl.org/coar/resource_type/c_46ec | |||||
資源タイプ | thesis | |||||
著者名 |
松永, 哲也
× 松永, 哲也 |
|||||
フリガナ |
マツナガ, テツヤ
× マツナガ, テツヤ |
|||||
著者 |
MATSUNAGA, Tetsuya
× MATSUNAGA, Tetsuya |
|||||
学位授与機関 | ||||||
学位授与機関名 | 総合研究大学院大学 | |||||
学位名 | ||||||
学位名 | 博士(工学) | |||||
学位記番号 | ||||||
内容記述タイプ | Other | |||||
内容記述 | 総研大甲第1324号 | |||||
研究科 | ||||||
値 | 物理科学研究科 | |||||
専攻 | ||||||
値 | 11 宇宙科学専攻 | |||||
学位授与年月日 | ||||||
学位授与年月日 | 2010-03-24 | |||||
学位授与年度 | ||||||
2009 | ||||||
要旨 | ||||||
内容記述タイプ | Other | |||||
内容記述 | チタン(Ti)合金(Ti-6Al-4V)は、機械的及び化学的特性に優れることから、ISAS/JAXAで<br />は科学衛星用の燃料タンク材として使用している。しかし、このタンクの耐圧試験中、室<br />温、耐力以下という状況ながら、顕著なクリープ挙動を観察した。観察された変形量は、<br />タンクとして使用する際、安全性に問題はない程度だった。しかし、Ti-6Al-4Vは、ボル<br />トやナットとしても使用しており、この場合、クリープによるひずみが、締結力の低下を<br />招くため、衛星などの破壊の原因になりかねない。通常クリープ変形は、0.4 <i>T</i>m(<i>T</i>m:融点)<br />以上の高温で顕著となり、室温が0.15 <i>T</i>mとなるTi合金では、設計上クリープ変形は考慮<br />されない。つまり、クリープ変形が考慮されない温度域且つ降伏応力以下の低応力域でク<br />リープ(室温クリープ)が発生した場合、予想外の事故に見舞われる危険性があるため、<br />本論文では室温クリープ機構を解明することを目的とした。<br /> 初めに、様々な結晶構造を有する金属及び合金を用いて、室温クリープが発生する材料<br />の判別を行った。これより、六方晶構造を有する全ての材料で室温クリープが発生し、概<br />ね10<sup>-9</sup> s<sup>-1</sup>程度の定常クリープ速度を示すことが分かった。この時、六方晶純金属の応力指<br />数(<i>n</i>)は約3であり、見かけの活性化エネルギー(Q)は、20 kJ/molとなった。<br /> 次に、なぜ室温クリープが六方晶材料のみで観察されるのか、透過型電子顕微鏡(TEM)<br />及び光学顕微鏡(OM)を用いて変形組織を観察した。TEM観察より、六方晶金属(工業用<br />純チタン(CP-Ti)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn))において観察された転位は、直線的で、<br />転位同士の切り合いが無く、一つのすべり系しか活動していないことが分かった。また、<br />軸比の差異による転位構造の変化は観察されなかった。正方形を基本とした立方晶構造で<br />は、すべりを起こしやすいすべり系が粒内に12個存在する。一方、六角形を基にした六方<br />晶構造では、2個と少ない。つまり、活動しやすいすべり系が多い立方晶構造では、多く<br />のすべり系で転位が運動するため、転位同士が絡まり加工硬化して、クリープが発生しな<br />いが、六方晶構造では転位同士の絡まりが発生しにくい(加工硬化の速度が遅い)ため、<br />転位は自由に結晶粒内を運動でき、室温クリープが発生したと考えている。<br /> OM観察はCP-TiとMgを使用し、室温クリープに対する変形双晶の影響を調査した。<br />CP-Tiでは、純度が高くなるにつれ変形双晶の発生が顕著になるため、2つの純度の異な<br />る試料を準備し、変形挙動の違いを観察した。またMgでは、引張及び圧縮クリープ試験<br />を実施した。これは、圧縮と引張では変形双晶の発生頻度に違いがあるためである。CP-Ti<br />による試験の結果は、より高純度な試料において、変形双晶の発生を観察したが、クリー<br />プひずみは小さかった。Mgにおいては、圧縮クリープ試験後の試料から、顕著な双晶の<br />発生を確認したが、クリープひずみは生まれなかった。つまり、室温クリープに対する、<br />変形双晶の影響は低いといえる。よって、六方晶金属の室温クリープは、転位の運動が主<br />たる変形機構であることが明らかとなった。<br /> しかし、粒内で転位運動に障害がない場合、転位は粒界に堆積して、クリープ変形を停<br />止させることが考えられるが、長期のクリープ試験から、変形は停止しないことが明らか<br />となった。つまり、転位は粒界において緩和されている可能性がある。そこで、粒径を変<br />化させた試料を用いて、後方散乱電子回折(EBSD)法及び原子間力顕微鏡(AFM)より、<br />室温クリープにおける粒界の影響を調査した。<br /> 従来の高温側の転位クリープでは、粒径依存性は観察されないが、室温クリープでの粒<br />系指数(<i>p</i>)は約1が得られた。これは、転位運動が粒界の影響を受けている証拠である。<br />またAFMより、クリープ変形中の粒界すべりの発生、EBSD法より、転位が粒界近傍に堆<br />積していることが分かった。室温クリープではQ値が低いことから、拡散による粒界すべ<br />りは観察されない。そこで、Q=15 kJ/mol程度と見積もられ、室温クリープのそれと近い、<br />すべり誘起の粒界すべり機構の適用が考えられる。この場合、律速過程は粒界での転位の<br />吸収で、その後、吸収された転位が粒界内を運動することで粒界すべりを生み出す。<br /> 以上から、室温クリープとは、結晶粒内の転位運動と粒界でのすべり誘起の粒界すべり<br />の連続的な発現によって発生する現象であることが明らかとなり、従来から報告のある転<br />位クリープとは異なる機構で変形することが分かった。この結果を受け、Ashbyの変形機<br />構領域図に新たに、室温クリープ領域を加筆した。また、室温クリープの構成方程式を以<br />下のように、定義することが可能となった。<br /><sub>.</sub> Q μb σ <i>b</i><br /> <big>ε</big>s = <i>AD</i><small>0</small> exp<font size="4">(</font>−----- <font size="4">)</font><font size="4">(</font>-----<font size="4">)</font><font size="4">(</font>----- <font size="4">)</font><sup><i>n</i></sup><font size="4">(</font>----- <font size="4">)</font><sup><i>p</i></sup><br /> <i>RT</i> <i>kT</i> <i>E</i> <i>d</i><br /> .<br />ここで、<big>ε</big>s は定常クリープ速度、<i>A</i>は定数、<i>D</i><small>0</small>は頻度因子, <i>R</i>はガス定数、<i>T</i>は温度[K]、<br /><i>k</i>はボルツマン定数、μは剛性率、σは応力、<i>E</i>はヤング率、<i>b</i>はバーガースベクトル、<i>d</i> は<br />粒径である。また、Q=20 kJ/mol、<i>n</i>=3、<i>p</i>=1となった。 | |||||
所蔵 | ||||||
値 | 有 |