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77:冷媒としてよく使われる液)を選択することによって遠心パレル研磨中の水素吸蔵の問題を解決し、水素フリーの遠心バレル研磨法の開発に成功した。\u003cbr /\u003e この水素フリー遠心パレル研磨法と電解研磨、或いは化学研磨を組合せた表面処理法をLバンド単セル空洞に適用した。電解研磨を組合せた場合では著しい水素病が発現した力瓢化学研磨を組合せた場合には水素病が起こらなかった。化学研磨では表面粗さが粗く、電解研磨に較べて高電界性に劣ることが我々の別の研究で実証されている。高電界性を確保するには電解研磨による滑らかな表面仕上げが不可欠である。従って我々はなお電解研磨と機械研磨の組合せにこだわり続け、水素フリー遠心バレル研磨と電解研磨の組合せで発生する水素病のメカニズムを追求した。\u003cbr /\u003e 化学研磨を組合せた場合の成功から、酸化プロセスが水素吸蔵阻止に重要な働きをしていることが示唆された。化学研磨では定常的な酸化過程とその酸化物の溶解により研磨が進行する。電解研磨では印加電圧により電気化学的に酸化膜を形成し、研磨液中に含まれるフッ化水素酸によりこの二オブ酸化膜を溶解することにより研磨が進行する。電解研磨処理の初期には、機械研磨による表面欠陥が多数存在する状態で印加電圧がかけられない状況を経由する(研磨液注入時等)。このプロセスに於いて水素陽イオンが表面欠陥に吸蔵されることをサンプルで確認した。電解研磨でも定常酸化過程を付加すれば電解研磨での初期に起る水素吸蔵を防止できる可能性がある。電解研磨に定常酸化性を持たせるために強力な酸化剤である硝酸の添加を試みた。この場合、硝酸添加量が多いと化学研磨となり電解研磨面が得られないので、硝酸添加量が少量であることが必要である。1500ppm(60%の硝酸が研磨液4リットル中10cc)の少量硝酸添加をした電解研磨液でLバンド単セル空洞を処理した結果、水素フリー遠心パレル研磨法とこの電解研磨の組合せにより水素病を完全克服できた。\u003cbr /\u003e しかし、この方法では、高電界領域でQ値の急激な低下が観察され、高電界性の点で完全とは言えなかった。この方法で研磨した空洞の内表面観察では、従来の電解研磨に比べて、光沢性に著しく劣ることが分かった。高電界性を保証するためには、遠心バレル研磨による表面汚染層及びダメージ層を除去するために必要な予備研磨(機械研磨の際に砥粒が二オブ表面に埋め込まれる。この砥粒による電解研磨システム汚染を回避するために、多量研磨前に研磨液を空洞内に封じ込めて少量電解研磨し、その後その研磨液を捨てる工程)のみにこの硝酸添加の電解研磨を行い、その後従来法による電解研磨を採用する必要がある。そこで、そのプロセスを検証するために、水素フリー遠心バレル研磨士硝酸添加電解研磨液による予備電解研磨士従来電解研磨法による多量研磨を二オブ空洞に実施し、水素病の有無、高電界性を調べた。水素病は起こらず、また、高電界領域でのQ値の急激な劣化が克服された。空洞性能試験後、内面観察した結果、電解研磨特有の光沢性が確認できた。40MV/mの高電界達成には、まだ追試が必要であるが、少なくとも27MV/mまではこの方法が有効であることが実証された。\u003cbr /\u003e 結論として、\u003cbr /\u003e1)二オブ空洞の新しい簡便かつ高速な機械研磨法(遠心バレル研磨法)を開発した。\u003cbr /\u003e2)この機械研磨法での水素吸蔵阻止対策を講じ、水素フリー機械研磨法を発明した。\u003cbr /\u003e3)2)の後、定常酸化プロセスを付加した電解研磨法で遠心バレルによる砥粒汚染層、ダメージ層を除去して水素吸蔵の種を一掃することで水素吸蔵を防止する方法を発明した。\u003cbr /\u003e4)3)の後、従来の多量電解研磨を採用することで25MV/m以上の高電界性を保証する方法を確立した。\u003cbr /\u003e5)この一連の方法により、二オブ超伝導空洞の表面処理からアニールを省くことに成功し、簡単かつ低コストの超伝導空洞表面処理法を開発した。\u003cbr /\u003e この開発の中で得られた科学的知見として、湿式機械研磨では金属表面に研磨キズが発生する瞬間にそのキズ口が、研磨液構成物(水素を含む場合)から水素を分解・吸着・吸蔵するラジカル反応が起きることを明確にした。また、定常酸化プロセスがこのラジカルな水素吸蔵プロセスの進行を阻止するのに有効であることを見出した。", "subitem_description_type": "Other"}]}, "item_1_description_7": {"attribute_name": "学位記番号", "attribute_value_mlt": [{"subitem_description": "総研大甲第649号", "subitem_description_type": "Other"}]}, "item_1_select_14": {"attribute_name": "所蔵", "attribute_value_mlt": [{"subitem_select_item": "有"}]}, "item_1_select_8": {"attribute_name": "研究科", "attribute_value_mlt": [{"subitem_select_item": "数物科学研究科"}]}, "item_1_select_9": {"attribute_name": "専攻", "attribute_value_mlt": [{"subitem_select_item": "12 加速器科学専攻"}]}, "item_1_text_10": {"attribute_name": "学位授与年度", "attribute_value_mlt": [{"subitem_text_value": "2002"}]}, "item_1_text_20": {"attribute_name": "業務メモ", "attribute_value_mlt": [{"subitem_text_value": "(2018年2月13日)本籍など個人情報の記載がある旧要旨・審査要旨を個人情報のない新しいものに差し替えた。承諾書等未確認。要確認該当項目修正のこと。"}]}, "item_creator": {"attribute_name": "著者", "attribute_type": "creator", "attribute_value_mlt": [{"creatorNames": [{"creatorName": "HIGUCHI, Tamawo", "creatorNameLang": "en"}], "nameIdentifiers": [{"nameIdentifier": "8878", "nameIdentifierScheme": "WEKO"}]}]}, "item_files": {"attribute_name": "ファイル情報", "attribute_type": "file", "attribute_value_mlt": [{"accessrole": "open_date", "date": [{"dateType": "Available", "dateValue": "2016-02-17"}], "displaytype": "simple", "download_preview_message": "", "file_order": 0, "filename": "甲649_要旨.pdf", "filesize": [{"value": "566.3 kB"}], "format": "application/pdf", "future_date_message": "", "is_thumbnail": false, "licensetype": "license_11", "mimetype": "application/pdf", "size": 566300.0, "url": {"label": "要旨・審査要旨 / Abstract, Screening Result", "url": "https://ir.soken.ac.jp/record/617/files/甲649_要旨.pdf"}, "version_id": "c45371ce-8828-4788-ba0a-739e651d5c94"}, {"accessrole": "open_date", "date": [{"dateType": "Available", "dateValue": "2016-02-17"}], "displaytype": "simple", "download_preview_message": "", "file_order": 1, "filename": "甲649_本文.pdf", "filesize": [{"value": "7.9 MB"}], "format": "application/pdf", "future_date_message": "", "is_thumbnail": false, "licensetype": "license_11", "mimetype": "application/pdf", "size": 7900000.0, "url": {"label": "本文", "url": "https://ir.soken.ac.jp/record/617/files/甲649_本文.pdf"}, "version_id": "f336210d-c85a-49fd-b838-64e8d8b389d5"}]}, "item_language": {"attribute_name": "言語", "attribute_value_mlt": [{"subitem_language": "jpn"}]}, "item_resource_type": {"attribute_name": "資源タイプ", "attribute_value_mlt": [{"resourcetype": "thesis", "resourceuri": "http://purl.org/coar/resource_type/c_46ec"}]}, "item_title": "新しい機械研磨と電解研磨による水素吸蔵を起こさない超伝導空洞の表面処理法の開発", "item_titles": {"attribute_name": "タイトル", "attribute_value_mlt": [{"subitem_title": "新しい機械研磨と電解研磨による水素吸蔵を起こさない超伝導空洞の表面処理法の開発"}]}, "item_type_id": "1", "owner": "1", "path": ["14"], "permalink_uri": "https://ir.soken.ac.jp/records/617", "pubdate": {"attribute_name": "公開日", "attribute_value": "2010-02-22"}, "publish_date": "2010-02-22", "publish_status": "0", "recid": "617", "relation": {}, "relation_version_is_last": true, "title": ["新しい機械研磨と電解研磨による水素吸蔵を起こさない超伝導空洞の表面処理法の開発"], "weko_shared_id": 1}
新しい機械研磨と電解研磨による水素吸蔵を起こさない超伝導空洞の表面処理法の開発
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名前 / ファイル | ライセンス | アクション |
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Item type | 学位論文 / Thesis or Dissertation(1) | |||||
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公開日 | 2010-02-22 | |||||
タイトル | ||||||
タイトル | 新しい機械研磨と電解研磨による水素吸蔵を起こさない超伝導空洞の表面処理法の開発 | |||||
言語 | ||||||
言語 | jpn | |||||
資源タイプ | ||||||
資源タイプ識別子 | http://purl.org/coar/resource_type/c_46ec | |||||
資源タイプ | thesis | |||||
著者名 |
樋口, 玉緒
× 樋口, 玉緒 |
|||||
フリガナ |
ヒグチ, タマオ
× ヒグチ, タマオ |
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著者 |
HIGUCHI, Tamawo
× HIGUCHI, Tamawo |
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学位授与機関 | ||||||
学位授与機関名 | 総合研究大学院大学 | |||||
学位名 | ||||||
学位名 | 博士(工学) | |||||
学位記番号 | ||||||
内容記述タイプ | Other | |||||
内容記述 | 総研大甲第649号 | |||||
研究科 | ||||||
値 | 数物科学研究科 | |||||
専攻 | ||||||
値 | 12 加速器科学専攻 | |||||
学位授与年月日 | ||||||
学位授与年月日 | 2003-03-24 | |||||
学位授与年度 | ||||||
2002 | ||||||
要旨 | ||||||
内容記述タイプ | Other | |||||
内容記述 | 超伝導加速空洞の大規模実用化は1989年にKEKに建設されたTRISTAN超伝導空洞で世界で初めて成功した。この成功以降超伝導加速空洞が各国の研究所で電子・陽電子衝突型のストレージリング、FELなど広く用いられるようになった。次世代の超伝導加速空洞の大規模応用としてTESLA、米国のSNS(建設中)、次世代の放射光光源を目的としたERL計画などがある。TESLAでは25MV/m以上(従来の5倍)の高電界性能が要求される。SNSでも従来の倍以上の高電界が要求されている。これらの大規模応用では高性能は勿論、製作面では信頼性と製作コストの削減が必須である。<br /> 以上の背景より、表面処理の観点から超伝導空洞の高性能、高信頼性、低コスト化を目指した研究課題を遂行した。<br /> TRISTANでは超伝導空洞の性能優位性と安定性を長期運転により実証した。しかし、その<br />表面処理工程は以下に示すように煩雑かつ高コストであった。<br /> TRISTANでの表面処理<br /> 1) ハーフセルのパフ研磨<br /> 2) 塩酸浸漬による錆チェック<br /> 3) シングルセル成形時の溶接シームのグラインド研磨<br /> 4) 多連空洞成形時の溶接シーム部のグラインド研磨<br /> 5) それら機械研磨による表面汚染層除去のための少量電解研磨(予備研磨)<br /> 6) 多量電解研磨<br /> 7) アニールによる水素脱ガス(真空熱処理)<br /> 8) 少量仕上げ電解研磨<br /> 加速空洞の信頼性を上げるためには製造過程で生じたキズなどを多く含む表面欠陥層を機械的に効果的に除去することが重要である。TRISTANでは機械研磨としてパフ研磨を採用した。しかしこの方法は多セル化された複雑空洞形状に適応することが難しく、溶接シーム部を一括研磨できない。TRISTANではハーフセルのパフ研磨と溶接シーム部の欠陥除去のためのグラインド研磨を併用した。また電解研磨中に吸蔵される水素の問題を回避するために脱ガス処理として真空アニールを行った。こうした理由で工程が煩雑化し高コストとなった。将来の超伝導空洞の大規模大量応用に対応するためには、1)簡素かつ低コストな機械研磨方法の開発が必須である。また、2)真空熱処理を省いた簡単な処理法を確立することが望まれる。<br /> 本研究では最初に簡単な機械研磨方法としてバレル研磨を考案し条件把握、さらに超伝導空洞による性能評価を行った。この方法は研磨メディアと研磨剤を入れて空洞を回転するのみである。空洞内面全体と溶接部が同時研磨される。従って簡単かつ低コストである。また、バレル研磨には人為的要素が入らず品質管理が容易となる。この方法を多数のしバンド単セル空洞に適用し、TESLAの目標性能25MV/mを全ての空洞で達成した。<br /> しかし、バレル研磨では研磨速度が遅い。表面欠陥層を目標とする30μm厚を除去するのに10日から2週間を要する。この問題を解決するためにバレル研磨の種々の改良を試みた。揺動ベッドの上でパレル研磨を行う揺動バレル研磨法、バレル研磨の回転方向を途中で反転させる反転バレル研磨法、化学研磨とパレル研磨を併用した化学パレル複合研磨法等を試みたカ瓢色々な問題があり最終解決には至らなかった。<br /> その後,2つの異なる回転運動:自転(空洞回転)、公転(ベッドの回転)を組合せた遠心バレル研磨法を試み研磨速度の高速化に成功した。Lバンド単セル空洞を使った試験では、従来パレル研磨の20倍もの研磨速度の向上に成功し、所定の研磨量を4時間で除去出来るようになった。この方法をLバンド3連空洞に適用した場合にも、各セル間で一様な研磨分布が確認できた。また、この方法をLバンド単セル空洞に適用し、遠心バレル研磨、電解研磨、アニールの組合せで30MV/mを越える高電界性を確認した。簡便かつ低コストな機械研磨法の開発に成功した。<br /> 次に、真空アニールを省いた簡単な処理方法の確立を目指した開発に着手した。初めに上記の遠心バレル研磨士電解研磨十アニールの表面処理工程の中でアニールを省いた、いわゆるアニールフリーの工程を試みた。この結果、著しい水素病の問題に直面した。<br /> 電解研磨や化学研磨の処理中に二オブが水素を吸蔵すると、冷却中にある温度領域で二オブ水素化物に相転移し低質超伝導体に変化する。水素病とは、その結果極低温の超伝導空洞の稼動状態で付加的な表面抵抗が生じ、Q値が著しく低下する現象をいう。この現象は空洞の冷却過程に強く依存する。最も危険な温度領域130~80K(二オブ水素化物の形成温度)に空洞が晒される時間が長いと発生しやすい。将来の大規模超伝導加速システムに於いて、そのような危険温度領域を急冷すると、システムに熱歪み上大きな問題がある。信頼ある加速器システムを構築するには、この問題の完全解決が必要である。<br /> TRISTANや他の大型システムでは、その対策として水素脱ガス処理(700~800℃真空アニ一ル)を施しこの問題を回避してきた。しかし、それは空洞製作工程の煩雑化と高コスト化を招く。我々の遠心バレル研磨と電解研磨を組合せた方法で発生する水素病でも、従来のアニール処理法を採用すれば、解決可能であることは明らかである。しかし我々は敢てアニールを省いた処理法の開発に挑戦した。TRISTAN超伝導空洞では横型電解研磨の採用により、吸蔵水素量を低減してアニール処理を省く試みを行ったが、508MHz単セル空洞を使った試験では水素病が発生し、高性能性を得るためにはアニールが不可欠であるとの結論に達し、TRISTANの全ての超伝導空洞(508MHzs連空洞)にアニール処理を施した。しかし、その基礎研究には尚検討の余地がある。ここでは水素吸蔵メカニズムに関する基礎研究を遂行し、水素吸蔵がどのプロセスで起こるかを見極め、その対策を講じた。<br /> まず、機械研磨を施さないでLバンド単セル空洞を横型連続電解研磨(TRISTANの方法)で200μm以上の多量研磨を行ったが、水素病が観察されなかった。このことによって、電解研磨は必ずしも水素吸蔵を引起すとは限らないことを確認した。更に二オブの超伝導空洞の電解研磨法について間欠電解研磨法(TRISTAN以前の方法)、電解研磨液への浸漬、陰極で発生する水素ガスからの水素吸蔵等を調査した結果、電圧ポテンシャル(空洞が陽極)を常時印加することが水素吸蔵を防止するために有効であることが判明した。TRISTANで開発した連続電解研磨法は電圧を常時印加することから、水素吸蔵の低減に有効であったことを確認した。<br /> 次に遠心バレル研磨でニオブサンプルを研磨し、二オブ中の水素ガス分析により遠心パレル研磨で多量の水素吸蔵が起きることを見出した。従って、我々の遠心バレル研磨士電解研磨処理で発現した水素病は、遠心バレル研磨での水素吸蔵が原因と結論付けられる。更に、サンプルを使った試験により遠心バレル研磨中の水素吸蔵のメカニズムを追求した。その結果、パレル研磨液(水等)の構成要素からの水素が二オブに吸蔵されると結論付けられた。そこで水素を含まない溶媒(FC - 77:冷媒としてよく使われる液)を選択することによって遠心パレル研磨中の水素吸蔵の問題を解決し、水素フリーの遠心バレル研磨法の開発に成功した。<br /> この水素フリー遠心パレル研磨法と電解研磨、或いは化学研磨を組合せた表面処理法をLバンド単セル空洞に適用した。電解研磨を組合せた場合では著しい水素病が発現した力瓢化学研磨を組合せた場合には水素病が起こらなかった。化学研磨では表面粗さが粗く、電解研磨に較べて高電界性に劣ることが我々の別の研究で実証されている。高電界性を確保するには電解研磨による滑らかな表面仕上げが不可欠である。従って我々はなお電解研磨と機械研磨の組合せにこだわり続け、水素フリー遠心バレル研磨と電解研磨の組合せで発生する水素病のメカニズムを追求した。<br /> 化学研磨を組合せた場合の成功から、酸化プロセスが水素吸蔵阻止に重要な働きをしていることが示唆された。化学研磨では定常的な酸化過程とその酸化物の溶解により研磨が進行する。電解研磨では印加電圧により電気化学的に酸化膜を形成し、研磨液中に含まれるフッ化水素酸によりこの二オブ酸化膜を溶解することにより研磨が進行する。電解研磨処理の初期には、機械研磨による表面欠陥が多数存在する状態で印加電圧がかけられない状況を経由する(研磨液注入時等)。このプロセスに於いて水素陽イオンが表面欠陥に吸蔵されることをサンプルで確認した。電解研磨でも定常酸化過程を付加すれば電解研磨での初期に起る水素吸蔵を防止できる可能性がある。電解研磨に定常酸化性を持たせるために強力な酸化剤である硝酸の添加を試みた。この場合、硝酸添加量が多いと化学研磨となり電解研磨面が得られないので、硝酸添加量が少量であることが必要である。1500ppm(60%の硝酸が研磨液4リットル中10cc)の少量硝酸添加をした電解研磨液でLバンド単セル空洞を処理した結果、水素フリー遠心パレル研磨法とこの電解研磨の組合せにより水素病を完全克服できた。<br /> しかし、この方法では、高電界領域でQ値の急激な低下が観察され、高電界性の点で完全とは言えなかった。この方法で研磨した空洞の内表面観察では、従来の電解研磨に比べて、光沢性に著しく劣ることが分かった。高電界性を保証するためには、遠心バレル研磨による表面汚染層及びダメージ層を除去するために必要な予備研磨(機械研磨の際に砥粒が二オブ表面に埋め込まれる。この砥粒による電解研磨システム汚染を回避するために、多量研磨前に研磨液を空洞内に封じ込めて少量電解研磨し、その後その研磨液を捨てる工程)のみにこの硝酸添加の電解研磨を行い、その後従来法による電解研磨を採用する必要がある。そこで、そのプロセスを検証するために、水素フリー遠心バレル研磨士硝酸添加電解研磨液による予備電解研磨士従来電解研磨法による多量研磨を二オブ空洞に実施し、水素病の有無、高電界性を調べた。水素病は起こらず、また、高電界領域でのQ値の急激な劣化が克服された。空洞性能試験後、内面観察した結果、電解研磨特有の光沢性が確認できた。40MV/mの高電界達成には、まだ追試が必要であるが、少なくとも27MV/mまではこの方法が有効であることが実証された。<br /> 結論として、<br />1)二オブ空洞の新しい簡便かつ高速な機械研磨法(遠心バレル研磨法)を開発した。<br />2)この機械研磨法での水素吸蔵阻止対策を講じ、水素フリー機械研磨法を発明した。<br />3)2)の後、定常酸化プロセスを付加した電解研磨法で遠心バレルによる砥粒汚染層、ダメージ層を除去して水素吸蔵の種を一掃することで水素吸蔵を防止する方法を発明した。<br />4)3)の後、従来の多量電解研磨を採用することで25MV/m以上の高電界性を保証する方法を確立した。<br />5)この一連の方法により、二オブ超伝導空洞の表面処理からアニールを省くことに成功し、簡単かつ低コストの超伝導空洞表面処理法を開発した。<br /> この開発の中で得られた科学的知見として、湿式機械研磨では金属表面に研磨キズが発生する瞬間にそのキズ口が、研磨液構成物(水素を含む場合)から水素を分解・吸着・吸蔵するラジカル反応が起きることを明確にした。また、定常酸化プロセスがこのラジカルな水素吸蔵プロセスの進行を阻止するのに有効であることを見出した。 | |||||
所蔵 | ||||||
値 | 有 |